「となり町戦争」を読む

告知は町の広報誌だった。

隣町との戦争開戦を伝える記事が小さく載る。
しかし町にはまったく動きはなく平穏そのものだ。

ただ毎月の広報誌に載る、増え続ける戦死者の数だけが、
実感はできないが「戦争」が確実に存在することを町民に伝える。

まるで区画整理を始めるように住民説明会を行い、
戦争業務全般をコンサルティング会社に委託する。

議会では補正予算を組み、
公共事業の一環として淡々と「戦争」を町役場は執行するのだ。

この小説はある種のファンタジーである。

だがこの作品は自治体の住民に対する情報提供、
施策告知の問題を鋭くついているのではないだろうか。

行政の取り組みや施策は住民にはブラックボックスだ。
ホームページや広報誌で取り組みは告知していると言う。

もちろん情報公開も請求さえ貰えれば対応しますとも言う。
しかし住民にほんとうに必要な情報は隠されたままではないのか。
それが戦争でさえも。

主人公の“僕”は町役場から「偵察業務従事者」に任命され、
戦争業務に住民参画(?)する羽目になる。

そして役場の戦争担当“香西さん”と偽装結婚し、
隣町に転居する。

何をすればいいのか判らない“僕”に、
「戦争の音を、光を、気配を感じてほしい」と“香西さん”は語りかける。

これは施策の盤上のコマにされてしまった、
無辜なる住民すべてに対する問いかけなのだ。

やがて戦争は終わり、主人公は再び日常生活を取り戻すだろう。

だが、曖昧な戦争という施策に従事したという記憶は、
密やかに主人公のこころに残るのである。

こんな住民参画は御免だと誰もが思う。

しかし、その住民参画という言い訳に、
使われてしまうのは無知な住民なのである。





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by TsunaguNPO | 2009-02-10 17:14 | こまいズム