「失われた町」

この思いを伝えたい。
たとえ明日、全てが失われても。

三崎亜記の「失われた町」は、
喪失を抱えて日常を生きる人々の悲しみを描いたファンタジーだ。

ただ単純な夢物語ではない。

世界は理不尽なものなのか。
だとしたら、人間だけはその理不尽さに抗うことが出来るのか。
読了後も静かな酩酊がずっと続くような恐ろしい小説だ。

デビュー作「となり町戦争」で公共事業としての“戦争”を描いた三崎は、
今回は町をまるごと消滅させることを手段として選ぶ。
共通しているのは、いずれも「理由はないが不可避」ということだ。

町の消滅とは何か。

およそ三十年に一度、何の前触れも、因果関係もなく、
一つの町の住民が忽然と姿を消すことである。

消滅した町の名は、新聞に載る数行の「公報」で人々は知るしかない。
それは戦争開戦の「お知らせ」が町の広報誌にだけ載ることと同義である。

この消滅現象に関わる唯一の行政機関である消滅管理局の人々と、
町に住んでいた家族や恋人を失った痛みを抑制しきれない人々の姿を、
三崎は丁寧な筆遣いで描いていく。それも甘く切なく。

この小説はSFであり、家族や恋人の喪失と再生の物語であり、
そして理不尽が横行する現実世界のメタファーなのである。

醒めた月に照らされる消滅した月ケ瀬町は、
財政破綻した夕張市になんと似ていることだろう。



失われた町
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by tsunagunpo | 2009-02-22 15:53 | こまいズム