「珈琲時光」

誰もが無口であるけれど、優しい瞳を持っている。

侯孝賢の「珈琲時光」は、小津安二郎の生誕100周年を記念し、
「東京物語」のオマージュという形で製作された松竹作品だ。

小津を敬愛する台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督が、
初めて外国語(日本語)で映画を撮ったということでも話題になった。

フリーライターの陽子は、生みの母が台湾人で、
日本と台湾を行き来し、気楽に一人暮らしを楽しんでいる。

高崎で暮らす実の父と義理の母とはいい関係だ。

神田神保町の古書店二代目、肇とは親しく付き合っており、
取材中の台湾の音楽家、江文也の資料も一緒に探す仲だ。

肇は陽子に思いを寄せているが、その気持ちを伝えられない。

ある日陽子は、自分が妊娠していることを高崎の両親に告げる。
相手は台湾の男性で、陽子はひとりで産むつもりだ。

日々は穏やかに過ぎ、珈琲を味わうときのように、
気持ちを落ち着け、陽子は心をリセットするのだった。

小津が愛した東京を舞台に、ひとりの女性の日常がさりげなく描かれる。

別の主役は鬼子母神等の古き日本の街角や路地であり、
また山手線、京浜東北線、高崎線、都電荒川線などの、
電車のある風景そのものである。

世界で最初の映画スペクタクルが、
リュミエール兄弟の「列車の到着」である事を、
すぐさま観客は想起するだろう。

お茶の水駅の総武線、中央線、東京メトロ丸ノ内線が交差し、
電車の過ぎゆく美しい風景はこの映画のクライマックスだ。

小津安二郎の“東京”は侯孝賢にとって、
移動すること、そのものが映画となりえる都市なのである。





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by tsunagunpo | 2009-04-28 09:40 | こまいズム