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角田光代の「対岸の彼女」

「大人になれば、自分で何かを選べるの?」

女の人を区別するのは女の人だ。
既婚と未婚、働く女と家事をする女、子のいる女といない女。
立場が違うということは、ときに女同士を決裂させる。

角田光代の「対岸の彼女」は、
まぎれもなく角田の今時点の最高傑作だろうし、
21世紀の日本には過ぎた作品であるのかもしれない。

専業主婦の小夜子とキャリアをつんだ女性起業家である葵。
二人は邂逅し、お互いに引きつけられながら、
そこに厳然とした断絶があるのを知る。

そこに流れているモノを渡ることが出来ない。
その向こう側にいる高校生だった頃の自分たち。
それは戻りたいとも思わない、思春期の過酷な試練の姿がある。

大人になったら、友達をつくるのはとたんに難しくなる。

高校生の頃は簡単だった。
いっしょに学校を出て、甘いモノを食べて、
いつかわからない将来の話をしているだけでも満たされた。

しかし、ほんとうにそれは友情と呼べるのか。

何かを選んだつもりになっても、
ただ空をつかんでいるだけ。
自分の思う方向に、自分の足をふみだすことも出来ない。

高校生だった葵が心の中でそう呟く時、
どこにも行けずにそこに佇む自分を見る。

そして角田光代は思う。
あの頃のような全身で信じられる友達を必要なのは、
大人になった今なのに、と。

対岸は暗く深い彼方にある訳ではない。
しかし、その身近な対岸は届かない先にあることも、
角田光代は知っているのだ。

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by tsunagunpo | 2009-08-01 15:29 | こまいズム