平林物語最終話 ~紙ひこうき~

こんな田舎嫌いだ。

そう言ったとき、パパは、
いままでボクがみたこともない悲しい顔をした。

セブンや本屋さんがないじゃないか。
どうやってコロコロコミック買うんだよ。

パパとママはウキウキして、
おじいちゃん家を直してる様子を見てる。
にせたい住宅にするらしい。

家じゃずっと、べっきょみたいだったくせに、
こんなときだけ仲良くするなんてずるいや。

こっちのガッコーを見学したときも、
全校生徒が20人いないなんて、少なすぎるよ。

いつもボクをいぢめるヤスオ君みたいなヤツが、
ガッコーにいたらサイアクだ。

でも、来月からはここの学校にいかなきゃいけない。

ボクは誰よりも紙ひこうきが上手に作れる。
ヤスオ君なんか、いばってるだけでヘタクソだ。

ボクはおじいちゃん家から近い西小の校庭に来た。
ひとりになりたかったし、今日作った紙ひこうきをとばすんだ。

いつも使う画用紙で作らなかったから、うまくとばないや。

「この紙で試してみろよ」

いきなり、声をかけられてびっくりした。
ボクと同じくらいの子どもだ。

「この前、見学に来てたよね、転校してくるの?」
「・・・うん、たぶん」
「オレはカズノリ、オレも先月転校してきた」

カズノリ君が持っていた紙はざらざらした茶色の紙だった。

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ニシジマ和紙って名前で、カズノリ君のおとうさんは、
ここからミノブ町に通って紙漉きの修行をしてるそうだ。

「この紙がいいんだ、最初はこつがいるけど」

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カズノリ君はあっという間に紙ひこうきを折った。

「ほらね、よく飛ぶぜ」

紙ひこうきはぴゅーっと空に吸い込まれた。

カズノリ君は海のある町からひらばやしに来た。

「海がなくてさみしくないの?」
「あるよ、海は、ほらね」

カズノリ君が鉄棒にくるっと逆さにぶら下がった。

「ほら、こうすると空が海みたいだろ、学校が舟でさ」

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ニシジマ和紙で折った飛行機をカズノリ君はくれた。
もっとボクも研究しなきゃ。

「またな」

あっ、ボクの名前教えるの忘れちゃった。
いいか、ガッコーに来ればまた会えるし。

その晩、ボクは夢をみた。

学校をひっくりかえした舟でカズノリ君が海を走っている。
ボクは紙ひこうきに乗って舟を追いかける。

富士山が大きく見えた。
でもその富士山は平林からみえる富士山の形だ。

ボクの乗った紙ひこうきは富士山に向かって、
青空をどこまでも滑っていく。

(終)

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(この物語はフィクションです)
掲載写真撮影:駒﨑 徹 氏
つなぐでは平林のガイドブックを2月刊行で制作します。お楽しみに!

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by tsunagunpo | 2009-11-09 08:48 | こまいズム