東京奇譚集

東京で静かに暮らす人々が体験する五つの奇妙な物語。

村上春樹の短編集である「東京奇譚集」は、
初めて題名に“東京”と謳われることで、
異世界への入り口が日常に潜んでいることを示唆している。

この短編集の中での白眉は、
息子を海で失った女性ピアニストを主人公とした「ハナレイ・ベイ」である。

東京でピアノ・バーを経営する主人公に、
ハワイからの訃報が届く。

彼女の息子が“ハナレイ・ベイ”で鮫に足を喰われて溺死したのだという。

主人公はハワイに駆けつける。
そして息子を亡くした場所を毎年のある時期に訪れるようになる。
ハナレイ・ベイは彼女の巡礼の地となったのだ。

東京からきた自分の息子と同年代のサーファー2人と、
彼女はひょんなことから知り合う。

彼女はその2人から片足の日本人サーファーを見たと聞かされる。

魂の交感を行うために毎年ハワイを訪れていた主人公は、
息子と出会うことなく東京に戻らねばならない。

違う世界へ移動してしまった息子の息遣いは、
彼女には感じられない。

その残酷さを彼女は全身で受け止める。
そして東京でまた日々の暮らしへ戻っていくのだ。

村上春樹の小説は例外なく奇譚であった。

そして語られる装置としての東京。
その場所が移ろいゆく人々のこころに、
ふと何かの存在を感じさせる瞬間がある。

その刹那を村上春樹は記述しようとしたのだろう。

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by tsunagunpo | 2009-11-28 15:01 | こまいズム