ある映画監督の死

ヌーベルバーグの旗手ともいわれていた、
映画監督エリック・ロメールが11日、89歳で亡くなった。

ロメールは教師、映画評論家を経て、
59年製作の長編映画「獅子座」で初メガホンをとった。

「海辺のポーリーヌ」、「パリのランデブー」など、
作家主義の作品を次々と発表し、ジャン=リュック・ゴダール、
フランソワ・トリュフォーらと並んで新しい波といわれる、
ヌーベルバーグの先駆者でもあった。

85年に製作された「緑の光線」では、
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した。

ひとりの女性のひと夏の体験を描く「緑の光線」は、
もっともロメールが一般に受け入れられた作品だろう。

夏のパリ。オフィスで秘書をしているデルフィーヌは20歳も前半、
ヴァカンスを前に胸をときめかせていた。

7月に入って間もない頃、
ギリシア行きのヴァカンスを約束していた女ともだちから、
急にキャンセルの電話が入る。途方に暮れるデルフィーヌ。

周囲の人がそんな彼女を優しく慰める。

いよいよヴァカンス。
女ともだちのひとりが彼女をシェルブールに誘ってくれた。

が、シェルブールでは独り、
海ばかり見つめているデルフィーヌ。

太陽はまぶしく海は澄み渡っているが、
デルフィーヌの心は晴れない。

16㎜撮影で女性スタッフ3人と、
出演者が手伝うと言う形で撮影されたこの作品は、
映画誕生の原初に立ち会ったような幸福なフィルムだ。

日没の時間、奇跡の光を待つデルフィーヌ。

彼女に訪れたちいさなしあわせが、観客のこころを撃つ。

映画に愛された巨匠が軽やかにこの作品で提示したのは、
主人公と観客が交感する高揚感であり、映画を観る喜びなのである。



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by tsunagunpo | 2010-01-14 16:53 | こまいズム