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カールじいさんの空飛ぶ家

愛する人との時間はかけがえがない。

ピート・ドクターの「カールじいさんの空飛ぶ家」は、
ピクサーのCG長編アニメの第10作である。

亡き妻エリーとの思い出が詰まった家に、
ひとり静かに暮らしている78歳のカールじいさん。

だが、周囲の再開発でその生活が失われそうになったある日、
エリーの夢だった南米奥地の秘境を目指すため、
人生最後の大冒険に出ることを決意する。

それは我が家に大量の風船をつけて、
大空へ向けて飛び立つことだった。

少年が少女と出会い結ばれ、
日常に追われて夢叶わずに老いさらばえる。

そして妻の死によって、
ひとつの物語が終わるまでを10分程で見せてしまう。

この叙情詩のようなモンタージュがあまりにも素晴らしい。

主人公カールじいさんの夢は、
1930年代に映画館で見た冒険家に憧れ、南米の秘境へ旅すること。

だがカールは冒頭に凝縮されたつつましやかな暮らしこそが、
真に冒険だったのだと気付く。

20世紀的熱情はまやかしにすぎず、きらびやかな虚構より、
地に足の着いた実人生の尊さが我々には冒険だ。

原題は「UP」である。

上昇志向の果て、あてどもなく遠くまで来てしまった我々も、
そろそろ空飛ぶ家に別れを告げなければならないのだ。



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by tsunagunpo | 2010-01-17 13:44 | こまいズム