ベルカ、吠えないのか?

1943年、北洋・アリューシャン列島。
アッツ島の玉砕をうけた日本軍はキスカ島からの全面撤退を敢行した。
無人の島には軍用犬「北」「正勇」「勝」
そして「エクスプロージョン」の4匹が残された。

自分たちは捨てられたのだ――その事実を理解するイヌたち。

その後島には米軍が上陸する。自爆した「勝」以外の3頭は保護される。
やがて島から3頭が離れる日がきた――
それは大いなる「イヌの現代史」の始まりだった。

古川日出男の「ベルカ、吠えないのか?」は、
4頭のイヌから始まる20世紀をまるごと描こうと試みた、
“戦争の世紀”をめぐる壮絶なクロニカルである。

衝撃的な作品だ。

イヌたちの受難と再生、「大主教」と名乗るKGBの元特殊工作班の老人、
そして老人に捕らえられ、人質となった日本からきたヤクザの娘。
同時進行する二つの物語は、時にはねじれ暴走し、
血と死の香りを漂わせながら静謐な終息へと収斂していく。

印象は「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を、
悪夢の中で再構築したファンタジーであるかのようだ。

ファンタジーはいつも残酷な物語が裏にある。

しかし、無辜なる血を大地に吸わせてきた20世紀の「戦争」は、
逆にそのリアルさ故にファンタジーに近づいてしまった。

21世紀が10年を過ぎてもこの世から戦争はなくなっていない。

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by tsunagunpo | 2010-02-25 21:17 | こまいズム