ベンジャミン・バトン 数奇な人生

私は数奇な人生のもとに生まれた。

デビッド・フィンチャーの「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」は、
スコット・フィッツジェラルドの短編小説を映画化した、
不思議な寓話であり、アメリカ史を巡る叙事詩だ。

80代の年老いた姿で生まれ、歳をとるごとに若返っていき、
0歳で生涯を終えたベンジャミン・バトン。

彼の奇妙な人生が、
数々の出会いと別れを通して描かれる。

この物語の白眉は、
息子の戦死を嘆き悲しむ時計職人が、
駅のホールに逆回りする時計を作ってしまったという、
冒頭に収められたエピソードである。

人間は前向きに進むことしかできない。

主人公たちの年齢の変化がCGで鮮明に処理されていくとき、
そのリアルさとそれゆえの不自然さに我々の心は揺れる。

そこに映っているのは生身の人間=俳優ではない。

後戻りできない人生を歩む我々の愛と悲しみと痛みが
作り出した我々の姿そのものだ。

いつまでも青春を享受したい。

つまりそれが人類の願いの結晶であり、
また儚い羨望のかけらでもある。

それを見ることで我々は、この人生の痛みを
ある愛おしさとともに受け入れることができるようになる。

それこそ我々が「物語」を必要とする理由なのだろう。






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by tsunagunpo | 2010-05-04 20:23 | こまいズム