ザ・ウォーカー
静謐な黙示録。
ヒューズ兄弟の「ザ・ウォーカー」は、
デンゼル・ワシントン主演の近未来アクションだ。
あらゆる文明が崩壊した近未来のアメリカ。
イーライと名乗る男は、世界でたった1冊残る本を運び、
30年間、ただひたすら西へ向かって旅をしていた。
そんな彼の前に、
その1冊の本を探し続ける独裁者・カーネギーが現れる。
デンゼル・ワシントン演じる謎の男=イーライは、
その名のとおり彷徨えるユダヤ人のメタファーである。
彼が運ぶ本はその名からすぐに観客にも理解されるだろう。
ゲイリー・オールドマン演じるカーネギーは、
「鋼鉄王」アンドリュー・カーネギーに代弁される、
現代文明と権力に固執する裸の王様であり、アメリカそのものだ。
殺陣は勝プロ時代の三隅研次であり、禁書のモチーフは、
フランソワ・トリフォーの「華氏451」を彷彿とさせる。
広大な荒地をひとりで歩き続ける男。
世界は壊れたままにどこまでも広く、人間はあまりに小さい。
イーライは西部劇の荒野を行くガンマンの系譜に連なる、
神話的存在であり、自らも復活の行方を継承するのである。
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by tsunagunpo | 2010-07-05 11:49 | こまいズム