キャタピラー

どうして、あんたはそんな姿で帰ってきた。

若松孝二のキャタピラーは、
哀しくも酷い性愛のスペクタクルだ。

第2次世界大戦中の日本、地方のとある農村。

シゲ子の夫・久蔵にも赤紙が届き、勇ましく戦場へと向かう。

しかし戦争から戻った久蔵の顔は、
無残にも焼けただれ、四肢を失っていた。

村中から奇異の目で見られながらも、
多くの勲章を得た久蔵は「生ける軍神」として崇められる。

シゲ子は戸惑いながらも久蔵の尽きない食欲と性欲を埋めていく。

やがて日本に敗戦の影が色濃く迫り、
久蔵は自ら戦場で犯した悪行に苦しみ始める。

中国戦線へ出征し正義の名の下に、
強姦と虐殺の限りを尽くしてきた姿が、
執拗に何度もフラッシュバックされる。

勲章、勲功を称える新聞記事、
そして昭和天皇皇后の御真影。

異形への嫌悪は徐々に軍神の貞淑な妻としての誇りに変容する。

だが妻は偽善と欺瞞に満ちた戦争のシンボル=夫に怒りをぶちまけ、
関係性は反転して妻は夫を性の道具として扱うまでになる。

食欲と性欲だけを残し、
芋虫のようにのたうち回るグロテスクな姿は、
だらだらとアメリカに依存した偽りの平和を貪り、
経済を拠り所に生き長らえた、現代日本のメタファーだ。

「戦後」は未だ終わっておらず、
愚行は何度でも繰り返されることを、
若松孝二は切実な思いで訴えかけているのだ。





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by tsunagunpo | 2011-06-25 22:10 | こまいズム