「アメリカ,家族のいる風景」
人生を、君たちとやり直せたら。
ヴィム・ヴェンダースの「アメリカ,家族のいる風景」は、
「パリ、テキサス」で組んだサム・シェパードの脚本を得て、
20年ぶりに再びアメリカの原風景を描こうと試みた野心作である。
西部劇のスターだったハワードは、
新作の撮影現場から突然逃げ出し、故郷に向かう。
そこで彼は、久々に再会した母から驚きの事実を聞かされる。
彼の子供を身ごもったというモンタナの女性から連絡があったのだ。
ハワードは自分の子供を探し出すため、
モンタナ州ビートの町へと車を走らせる。
ハワードの心の孤独が深まっていく様が素晴らしい。
昔の恋人との再会、息子の反発、
骨壷を抱えた不思議な少女との出会いに、
ハワードは何を得て、どうしたいのかさえ判らない。
「パリ、テキサス」で彷徨うことの痛みを崇高なまでに高めた、
広大で空虚な砂漠の描写や、ひと気のない寂れた田舎町の風景は、
この作品でも鮮烈だ。むしろ凄みを増したアメリカの光景はより悲しい。
この作品は“視線”の映画でもある。
音信不通になっていたかつての男を見る女の目。
ふと思い立って向き合うことになった家族を見るハワードの目。
そして21世紀のアメリカを見るヴェンダースの目に心を打たれるのである。
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by tsunagunpo | 2009-08-21 23:09 | こまいズム