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「ジェノサイドの丘」

長文をご勘弁願いたい。

それはあまりにも苛烈な大虐殺だった。

著者・ゴーレイヴィッチは到底信じられない殺戮劇がどうして可能になったのか、
その真実だけを「ジェノサイドの丘」で究明しようとする。

事件の舞台はアフリカの小国ルワンダ。
ここで起こったのは多数派フツ族による少数派ツチ族の大量虐殺だ。

ルワンダの総人口の一割が殺された。

当時世界に大きな衝撃をもたらした事件だが、
今ではどれほどの人間がこの行為を覚えているだろうか。

ドン・チードル主演の「ホテル・ルワンダ」もこの事件に材をとっている。

本書の冒頭はこんな言葉で始まる。

「ルワンダでは94年の春から初夏に至る100日間に国民の10人に1人、
 少なくとも80万人が虐殺された。
 この死者は、比率からすればホロコーストにおけるユダヤ人の犠牲者のほぼ三倍になり、
 広島、長崎の原爆投下以来、最も効率的な大量虐殺だった。」

日本では「ジェノサイド」というとゲーム用語として流布されている。

この言葉に込められたおぞましい記憶は既に風紋のように、
人類の歴史の中で忘れ去られようとしているのだ。

世界に目を向ける時、
「虐殺」と言葉で綴るには難しくない語句が、
こころの闇を身近な存在にする。

「ジェノサイドの丘」を読了して思う事は、
国が崩壊し、昨日まで笑顔だった隣人が殺人者に変貌する様が
決してルワンダに限ったことではないという事実だ。

このルポルタージュの白眉はジェノサイド=民族虐殺以降、
初めてルワンダの地を西側首脳として訪問したのが、
ビル・クリントンであったということである。

ジェノサイドの証拠の前で、
あたかもその事実がなかったような振舞いをしていた
先進各国(もちろん国連も含まれる)には、
クリントン米大統領の行為は鋭い叱責だった。

しかし、その行為がルワンダ国民の感情を
少しでも安らげるものではなかった。

ジェノサイドは自発的でも偶発的でもない、
組織的に人間を破壊しようとする政策であったからだ。

訳者・柳下毅一郎は、
この貴重な書籍を出版するあてもないままに、
翻訳に取り掛かったそうだ。

物語はハッピーエンドを迎えない。

今もイラク、アフガンでは一般市民が血を流し続けている。

世界のどこかでジェノサイドは続いているのだ。


「ジェノサイドの丘」_c0018195_9565027.jpg


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by tsunagunpo | 2009-10-15 09:58 | こまいズム