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プレシャス

わたしを愛してくれる人は誰か。

リー・ダニエルズの「プレシャス」は、
アメリカ貧困層の暗部を凝視したヒューマン・ドラマだ。

1987年のニューヨーク・ハーレムで、
両親の虐待を受けながら希望のない日々を、
黒人少女プレシャスは生きていた。

放校され、支援学校のレイン先生に読み書きを習い、
つたない文章で自分の心情を綴り始めたプレシャスは、
ひたむきに人生の希望を見出していく。

プレシャスは異様に太っている。
彼女は読み書きができず、実父にレイプされ2度も妊娠した。

通常ならば楯になってくれるはずの母親が鬼よりもむごい。

母親は徹頭徹尾プレシャスにつらく当たる。

責めて責め抜く背後には、
夫を実の娘に奪われたという最悪の嫉妬が横たわっている。

彼女は怒りや悲しみを分厚い肉に埋没させ、
黙々と学び、黙々と前進していく。

こびりついていた不幸を少しずつ過去のものとして、
牢獄だった肉体は豊かな沈黙体に変貌するのである。





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by tsunagunpo | 2010-12-01 17:59 | こまいズム