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キック・アス

なぜ、誰もスーパーヒーローになりたがらない。

マシュー・ボーンの「キック・アス」は、
同名人気コミックを映画化したアクション・コメディだ。

ニューヨークに住む高校生デイブはふと思い立ち、
何の特殊能力も持たないまま、ひとりコスチュームを着て
スーパーヒーロー「Kick-Ass(キック・アス)」になる。

だが、正義の味方として悪者を退治するのは、
骨の折れる仕事で、かなり痛い。

やがて、傷だらけになりながらも、
キック・アスとしての活動を続けるデイブの前に、
同じ稼業のビッグ・ダディとヒット・ガールが現れる。

キック・アスはアニメの正義感が、
そのままコスチュームを着けてストリートに出た、ボンクラだ。

特殊な能力がないとヒーローになれないのか。

キック・アスは格好悪い。
初任務もストリート・ギャングにボコボコにされてしまう。

その動画がYouTubeで配信され、
人気が出るという設定が現代的だ。

しかし、ギャング団に拉致されたキック・アスとビッグ・ダディは、
ネットで公開処刑を生中継されるピンチに陥る。

我々はイラク戦争時に公開された処刑映像を想起するだろう。

ヒット・ガールは父親の復讐の片腕として、
大量殺戮を楽しそうにあらゆる武器を駆使してやってのける。

ヒット・ガールは世界各地に駐留するアメリカ軍のメタファーだ。

彼女の少女未満の身体から、
あらゆる殺しのテクニックが披露されるのは、
何も事実を知らされないまま派兵された10代の若者が、
重火器を駆使して無辜な市民を虐殺するのと同義なのである。





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by tsunagunpo | 2011-03-09 10:06 | こまいズム